江戸指物とは

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木を活かし、技を秘める。

日本が世界に誇る伝統工芸、江戸指物。
そのすっきりとした小気味のいい美しさと堅牢さは、木の持ち味と精緻な技とがひとつになって生み出されます。
華美な装飾を施すことなく、シンプルなデザインと控えめな表現で木が持つ本来の美しさを引き出す。
その一方で、見えないところに驚くほどの手間暇をかけ、高度な技術と贅を尽くす―――。

江戸指物は、まさに江戸の美意識と遊び心の結晶といえるでしょう。

江戸指物と木

日本には古来、家具・調度品の材として用いられてきた、美しい樹種がたくさんあります。
江戸指物では、その中でも、杢(もく)と呼ばれる独特の美しい木目や、ギンと呼ばれる深い光沢をもつ材を多く用います。
一本の木が材となり、江戸指物として仕上げられるまでには、数年から十数年、場合によってはもっと長い時間が必要です。
製材、乾燥、養生といった過程を経て、良質な材はさらにその強度を増し、より深い光沢を放つようになります。
こうして大切に材として寝かされていた木は、時が来ると指物師の手に委ねられ、江戸指物へと華麗に姿を変えるのです。

代表的な樹種

IMG_1892桑(クワ)・梻(タモ)・欅(ケヤキ)・桐(キリ)・黄檗(キハダ)・献保梨(ケンポナシ)・槐(エンジュ)・栓(セン)・黒柿(クロガキ)

江戸指物と技

堅牢に、そしてすっきりと美しく仕上げられた江戸指物。
その秘密は、見えないところに凝らされた精緻な技にあります。
指物では、板と板・板と棒を、ホゾと呼ばれる組み手(継手・仕口)によって自在に組み上げていきます。
釘を使わず、複雑な形のホゾを高い精度で加工し、組み上げる。しかし、組み上がってしまうとホゾは中に隠れ、外からは見えません。
高度な技を駆使しながらそれをあえて隠してしまうところに、江戸の心意気が生きています。